ゲロゲロ通信
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パラリンピックでも大活躍! 障がいのある人も楽しめる「水泳」シリーズ 31
シリーズ 31:パラリンピックでも大活躍!
障がいのある人も楽しめる「水泳」
パラリンピックでも日本のメダル獲得が目立った競技のひとつに水泳があります。水泳には陸上とは違って、水中なので転倒をしても怪我をしにくかったり、全身運動が行えたりするなど、利点はたくさんあります。また、水には浮力があり、陸上では動かしにくい動きができたり、介助がしやすかったり。そのため、障がいのある人も安心して水泳ができるのかもしれません。そこで、今回は障がいのある人も楽しめる水泳の魅力に迫ってみました。
「水泳」ならではの4つの魅力!
水泳は有酸素運動であり、水の特性を活かせば、足・腰などに負荷がかからないように楽しむことができるスポーツでもあります。そこで、水泳ならではの特色を見直してみましょう。
- 浮力
水中に入ると浮力が働き、水中では深さにもよりますが、体重が1/10になることもあります。そのため、体重の負荷がかなり軽減されます。腰やひざに負担をあまりかけずに、安全に有酸素運動や全身運動ができるメリットは大きいといえます。そのため、水泳は麻痺があっても運動可能なのです。
- 水圧
水中では水圧があるため、筋肉を刺激したり、血行を促すマッサージの役割を果たしたりもしてくれます。また、水圧が筋肉の収縮を助ける役割を担っていて、身体の抹消から心臓に戻る血液循環を活発化してくれています。 また、水中にいると自然と腹式呼吸となり、呼吸筋の教化にもつながるといわれています。
- 水温
水の熱伝導率は空気の約27倍といわれ、水中ではすぐに体温が奪われるのはそのせいだそうです。そこで、体温が下がると、人間の体は体温を一定に保とうとする機能が働き、エネルギーを消費します。水泳では、体温の調整機能がトレーニングされ、風邪を引きにくくするなどメリットも生まれてきます。また、温水の場合、心理的リラックス、身体的な鎮静・鎮痛、筋弛緩効果、血流の改善などの効果もあるといわれています。
- 抵抗
水に入ると誰でも経験したことがあると思うのですが、陸を歩くよりも前に進みづらいはずです。それは、一人ひとりの動くスピードや動く量に応じて水の負荷が生じているせいです。空気よりも水の密度は高く、それが「抵抗」といわれるものです。水の抵抗は空気の約12倍もあるといわれ、すべての動きにかかわり、個人の体力に合ったほどよい水の重さ(抵抗)で、全身の筋肉を効率よく鍛えてくれます。そこで、自分に合った運動が楽しめるというわけです。そして、手足などを早く動かせば抵抗が大きくなり、ゆっくり動かせば、抵抗を感じることが少なくなります。水に対して手のひらの角度を変えることでも抵抗の調整が行えるといいます。水中ではこの抵抗があるために、転倒のリスクが低くなるのです。
障がいのある人も水泳を楽しもう!
昨年、開催された「東京パラリンピック」を観戦して、障がいのある人でも水泳を楽しむことができると、勇気づけられた人は多いと思います。水泳は障がいのある人も楽しめるスポーツなのです。それは、前述したように4つの特性は見逃せません。
そして、障がい者水泳の場合、障がいの種類によっては、飛び込みをするのが難しい人には水中スタートや、浮力を補助する用具の使用が認められていることをパラリンピックを通して知った人も少なくないと思います。また、視覚などの障がいによってターンやゴールが判断できない競技者に対しては、安全管理上、主催者に許可された人が指示棒などによって合図をしても良いことになっているなど、安全に泳ぐための工夫がなされているのも知ることができました。ちなみに「タッピング」は視覚障がい選手が壁にぶつかってケガなどをしないよう、選手の身体に触れて伝えることが可能です。先端に柔らかい素材を付けた「タッピングバー」などで選手に知らせています。
障がいの度合いに応じても、水泳が楽しめるように考えられているのが障がい者水泳なのです。
もちろん、障がいのある人にとって水泳をする目的はいろいろです。水の特性を活かして、リハビリテーション目的として筋力トレーニングなどを行う人もいれば、健康の維持増進を図りたい人もいます。パラリンピックなどのように、競技者として泳ぎを身につけたい人もいます。それぞれの目的にあった水泳を楽しんでほしいものです。
実際に水泳を始めた、障がいのある人の声も聞いてみました。「交通事故にあってから車椅子生活になり、水泳をあきらめていました。しかし、陸上では動かしにくい動きもプールの中では浮力などをうまく利用することで水泳ができる、プール活動ができると知り、怖々ですが、水泳を始めました。今では楽しみのひとつになっています」と、Aさん。そして、水泳を始めてから「体力がつきました。それだけでなく、やればできると自信もついてきて、物事を積極的に受け止められるようになってきました」と、水泳の魅力を語っていただきました。
水中なので「介助しやすい」という利点も
障がいのある人の中には水泳をする場合、介助を必要とする人もいます。介助する人にとっても、水の特性があるので「介助しやすい」という声が少なくありません。たとえば、障がいのある人の介助を行う場合、水深が乳頭ぐらいの位置にある場合は70%も体重が軽くなるといわれ、この深さぐらいならプール内での介助が無理なく行えるといわれています。陸上とは違い転倒をしても怪我をしにくいのも、介助者にとっては利点のようで、陸上では行えない全身運動にも挑戦できるという声もありました。
そして、障がいのある人も介助者も水中で大切なことは「無理をしない」「無理をさせない」ことです。
障がいがある、ないにかかわらず、水泳で大切なことは「体調を万全にして、水泳に臨むこと」なのです。体調不調と感じたら、水泳を取りやめましょう。加えて、適度な休息も忘れないことです。
また、担当医師などとも相談して、水泳できるかどうかを判断してはいかがですか。
以下はすべてのスイマーにいえることです。
【水泳の注意点】
- 水泳前には準備体操をお忘れなく。
- 長時間、水中に入るのはやめましょう。定期的に休憩を取りましょう。
- 体の不調を感じたらプールから出ましょう。
- 定期的に水分補給をしましょう。
- プールサイドなどはすべりやすいので転倒する危険性があり、要注意です。
- 水泳後、ストレッチなどのクールダウンは大切です。クールダウンすることで筋肉疲労などが軽減されます。
注意点を守って、水泳をエンジョイしましょう!